近年、葬儀の形態は多様化しており「家族葬」という、文字通り家族や近しい親族だけの少人数で執り行うスタイルが主流となっています。規模や参列の人数が少なくなっても「故人を偲び、弔う」という気持ちは変わりません。その中で、遺族の代表として葬儀を取り仕切る重要な役割を担うのが「喪主」です。初めて喪主を務めるという方も少なくないでしょう。そんな方にも不安なく務めあげられるよう、今回のコラムでは、喪主が臨終から葬儀後にかけて行うべきことを前編、後編に分けて詳しく解説します。
前編では「喪主とは~ご臨終から葬儀前までにやること」にを詳しく考察します。
喪主とは
喪主とは、葬儀を執り行う執行責任者です。葬儀全体の主催者として参列者や周囲に気を配り、葬儀が円滑に進むように務めるのが喪主の役割です。一般的に葬儀後の法事・法要(四十九日、一周忌、三回忌等)も喪主が主催者として取り仕切る場合が一般的です。
葬儀では喪主からの参列者に向けてあいさつを行う場面が沢山あります。喪主のあいさつでは、故人が生前お世話になった人への感謝や、葬儀に参列してくださった会葬者にお礼と感謝を述べるのが一般的です。
喪主を決めるのにはっきりとしたルールはありませんが、一般的な決め方はあります。葬儀における喪主の決め方や、マナーについて解説します。
喪主はだれがするべき
葬儀の喪主は基本的に誰が務めても問題ありません。とは言え一般的には故人の家族や配偶者が務めるのが一般的です。家族や配偶者が高齢であったり、病気などで務めるのが難しい場合は、その長男や長女、またはその他の近親者が務めるケースもあります。未成年者や高齢で葬儀の運営や判断が十分でない場合は、親族で協議して代理人を立てるケースもあります。
一般葬の場合、故人の遺志や家族の状況を考慮し、必ずしも血縁関係者でなくても、故人と親しかった友人などが喪主を務めるケースも見られますが、家族葬の場合、家族・親族の場合が圧倒的に多いです。喪主選びとして大切なのは、故人を偲び、滞りなく葬儀を執り行うことができる人物を選ぶことです。
一般的な喪主の決め方
配偶者の場合
喪主は故人の配偶者が務めるケースが一般的ですが、配偶者が既に亡くなっていたり、病気など体調を崩している場合は、他の親族が喪主を務めるケースも見受けられます。配偶者が難しい場合で家族がいない場合は、代わりに親戚や他の人を検討しましょう。
故人の関係者と話し合って決めることで、周囲も納得も得やすく、葬儀の段取りもスムーズに進みます。
家族・親族
故人に配偶者がいない場合、または体調不良などで喪主を務めることが難しい場合は、家族・親族など血縁関係が近い人が喪主を務めます。喪主選びの候補者順として一般的には、長男・次男など故人の直系の男子で年齢順、その次に長女・次女など直系の女子で年齢順に検討することが多いようです。故人に子供がいない場合は、血縁関係が近い順番になります。血縁関係の順番は両親、故人の兄弟、おじ・おばです。
この場合、血縁関係が近い人が喪主をしなければならないという決まりはありません。葬儀の規模が比較的小規模な家族葬の場合、結婚や就職などで遠方に住んでいたり、故人とのつながりが薄かったりする場合は、同居している人が優先される場合もあります。
友人・知人
故人に配偶者や親族がいない場合は、友人や知人が喪主を務めても問題ありません。長年親しい関係にある友人の他、何らかのコミュニティでのつながりから、喪主を依頼するケースもあるようです。故人の関係者が多い場合は、亡くなる直前まで親しい仲にあった人、もしくは近所に住んでいる友人などから喪主を選出するケースも見受けられます。
遺言または直接故人から指名された場合
生前から葬儀にこだわりがある故人の場合、前もって喪主を依頼しているケースがあります。大規模な葬儀や社葬の場合に多く見受けられます。この場合は「喪主」ではなく「葬儀委員長」と呼称も変わり、前記で解説した「勤務先代表・上司」「友人・知人」「取引先」の場合もあります。比較的規模の小さい家族葬の場合はそこまでこだわる人も少ないようです。
喪主がやること【ご臨終から葬儀前まで】
喪主の仕事は、故人がご臨終した直後から始まり、葬儀前までは、特に慌ただしいです。故人の存命を精一杯応援した後のご臨終で大切なご家族を失っている状況であり、気が動転する人や、悲しみが大き過ぎてすぐに動けない方も多くいると思います。喪主候補の人は来るべき日に、少しでもスムーズに対応出来るよう、事前に喪主の役割を把握しておくことをおすすめします。
近年では葬儀社の事前相談会に参加して、その日が来ても慌てないよう準備をしている人も多くなってきています。
死亡の確認・死亡診断書の受け取り
故人が亡くなられ、死亡の確認後、担当の医師に死亡診断書を作成してもらいます。死亡診断書とは、死亡したことを医学的・法律的に証明する書類で死亡届と対になっています。葬儀後に役所に提出したり、相続等の手続きでも必要になるので、受取時に2~3セットコピーすることを忘れずに。
地域の役所への死亡届の提出期限は、遺族が死亡の事実を知った日から7日以内とされています。死亡診断書を提出しないと生存しているとみなされて、火葬や埋葬ができず、年金の支給・課税も継続されます。死亡診断書を渡されたら、すぐに役所へ提出しましょう。
病院退院手続き
故人が病院で亡くなった場合は、喪主や遺族が退院手続きを進める必要があります。退院の手続きは病院が主導となって進めるのが一般的です。退院の際には病院から渡された書類に記載し、医療費や入院費の精算をします。医療費、入院費は後日の精算になるケースが一般的ですが、病院によって精算方法に違いがあるので、どのように対応するのかを、担当看護師に確認しましょう。退院手続きは、葬儀社のスタッフが病院に到着するまでに完了させることが望ましいでしょう。
葬儀社の選定・連絡・搬送
一番最初に手配する項目です。何故ならば、葬儀社によっては、今後の葬儀までの段取り、分からないこと、不安な事柄に対してアドバイスをしてくれたり、本来喪主がすべきことを代行してくれる場合があります。臨終後は速やかに葬儀社を選定・手配し、故人を安置場所へ移動する必要があります。病院から、自宅に葬儀まで安置することができるのか、もしくは、別の安置場所を紹介してもらう必要があるのか、家族でよく相談しましょう。
訃報連絡
前記の急ぎ3項目の手配完了後に親族、友人、勤務先などに訃報を伝えます。葬儀の日程等、細かな部分が決まったら、勤務先、故人の知人やお世話になった方、町内会等の関係各所へ訃報を流し、参列していただきたい方に葬儀の案内を出します。
菩提寺・僧侶・宗教者への連絡
菩提寺がある場合は、僧侶に連絡し、通夜・葬儀の日程などを相談します。
葬儀の打ち合わせ
葬儀社と葬儀の日程、場所、形式、規模、予算など詳細について打ち合わせます。
葬儀社が先んじて決めなければいけないことを提示してくれます。事前に決めておけば混乱の中、慌てないで済むでしょう。
確認すること、決めなければならないことは下記の項目です。
・葬儀の希望日時
・葬儀のプランと予算
・葬儀の形態(家族葬・一般葬など)
・会場の希望(葬儀場の場所や収容人数等)
・参列する親族の予定人数
・参列者の予定人数
・宗派
・菩提寺の有無
・通夜振る舞いの内容
納棺
納棺とは、亡くなった人を棺に納めることを言います。単に棺に故人を納めるというだけでなく、身なりを整え、故人が愛用していたものを一緒に納めるなどして、旅立ちの準備を整える意味があります。一般的に、納棺の儀式は、故人が亡くなってから自宅に安置された際に行われる、納棺までのさまざまな儀式のことを言います。最近では施設や病院などで亡くなった後、自宅に戻らないという方も増えており、このような場合はお通夜を行う葬儀社で行う場合もあります。
末期の水からはじまり、体を洗い清める湯灌、遺体の顔を整える死化粧、旅のための衣装である死装束の着付け、故人を送り出す際に持たせてあげる副葬品の用意という順番で行われます。
まとめ
以上のように喪主はご臨終から通夜・葬儀前までが一番忙しいことがわかります。
まして喪主を初めて務める方には、時間がない中で様々な判断や手配をすることから、かなりの負担を強いることになります。最近では葬儀社主催の「事前相談会」が随時開催されており「もしもの場合」に備えて、予算や段取り等のシミュレーションを提案してくれます。葬儀本来の「故人を偲び弔う」気持ちが疎かにならないためにも、事前相談会参加をおすすめします。
事前相談はこちら
https://familyhall-sora.jp/advance-consultation/